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2017年7月10日月曜日

(計算が)ヤバイ級数










は有名です(前者はバーゼル問題で後者は部分分数分解で計算できます)。それでは








はどうなるのでしょうか?? 収束するのは明らかです。計算してみましょう。
(厳密な議論が欠けている箇所が幾つかあるので注意してください)

級数をグッと睨むと、





と変形出来そうな気がします。ここでおもむろにwikipediaを参照すると




と書けるらしいので($B_k$はベルヌーイ数)、元の級数は





となります。ここでおもむろにwikipediaを参照すると、




という双曲線関数の謎テイラー展開(ローラン展開)が得られるので、収束半径を無視して$x=\pi$を代入して整理すると




従って





となります。
(ちなみに数値的にもこの値は合致します)


余談


ゼータ関数は



と書ける(らしい)ので、級数に代入して、総和と積分の交換が出来ると信じて更に収束半径諸々を無視して無理やり計算すると




となります(最後の等式は$\sin$のテイラー展開です)。

従って、(多分)




が成り立ちます(多分)

2017年3月26日日曜日

全順序・半順序・擬順序

概要


 数学では様々な順序を考えることがあります. 一番簡単な例で言うと実数の全体 $\mathbb{R}$ において, $x,y\in \mathbb{R}$に対し$y-x\geq 0$ を $x\leq y$と定義して順序集合$(\mathbb{R},\leq)$を考えることが多いです. 実数だけではなく, 例えばグラフ理論でも順序を考えたりすることがあります.
 本記事では, 順序の公理について述べ, 全順序・半順序・擬順序について一気に述べたのちに例を幾つか挙げたいと思います.

解説単語 : 擬順序(前順序), 半順序, 全順序


順序の定義


 集合 $E$ (有限でも無限でもよい) に対し, $R: E\times E \to \{0,1\}$ を 関係 と呼びます. 特に, $R(x,y)=1$となるときは $x R y$と書くことがあります. 例えば $E=\mathbb{R}$, 関係$R$ として 「$\leq$」 を考えるとこれは大小関係を表す関係になっています. また, 「$=$」 という関係も考えることが出来ます. これは等号の関係です. このように見ると, 関係というのは非常に抽象的なもので, 表現力が非常に高いものだということが分かると思います.

 関係 $R$ が, 集合 $E$ に対していわゆる「順序」を付与するような関係である(即ち大小関係を決定するような関係である)ならば, そのことを強調するために $R$を順序と呼び, $\leq$ などと記述します. そして組 $(E, \leq)$ のことを 順序集合と呼びます.

 順序 $\leq$ として, 次の性質を満たすものを考えましょう:

  1. 任意の $a \in E$ に対して $a \leq a$ (反射律)
  2. $a,b,c \in E$ が, $a\leq b$, $b \leq c$ ならば $a \leq c$である (推移律)
  3. $a,b \in E$ が $a \leq b$, $b \leq a$ ならば $a=b$ である (反対称律)
  4. 任意の $a,b\in E$ に対して $a \leq b$ もしくは $b \leq a$ のどちらかが必ず成り立つ (全順序律)
 例えば 実数における通常の順序を考えると1~4の全てを満たしていることが用意に分かります. このように, これら全ての条件を満たすような順序 $\leq$ を特に 全順序 (totally order) と呼び, 全順序$\leq$ に対して $(E, \leq)$ を 全順序集合 (partially ordered set) と呼びます. また, 1~3を満たすものは 半順序 (partially order) と呼び, 1と2を満たすものは 擬順序 (quasi order) と呼ばれます.
 まとめると
  • 全順序 : 1~4 を満たす
  • 半順序 : 1~3 を満たす
  • 擬順序 : 1~2 を満たす
です. 注意されたいのは, 全順序は半順序でもあり, 擬順序でもあるということです. 

 さて, これらの三つの順序の概念について, 幾つかの例を挙げながら見ていきましょう.


例(i). 集合の包含関係


 $U$を空でない集合とし, $E=2^U$ としましょう. 即ち $E$ は$U$の部分集合族です. このとき, $A, B\in E$ はそれぞれ$U$の部分集合となっています. そして $A \subseteq B$ ならば $A \leq B$ と定義しましょう. さて, $(E,\leq )$ はどんな順序集合になっているでしょうか?

 例として $U=\{1,2,3,4,5\}$ としてみます. $A = \{1,2,3\},\,B=\{1,2,3,4\}$ のときは $A \leq B$ となりますが, $A=\{1,2,3\},\,B=\{2,3,4\}$のときは $A\leq B$ でも $B \leq A$ でもありません. 順序の公理のうち, 4だけが満たされないので, この順序は半順序となります. ちなみに $A \leq B$ でも $B \leq A$ でもない組$(A,B)$ のことを 比較不能対 と呼びます.



例(ii). ビッグオー


 $E$ として, 自然数から正実数への関数の全体 としましょう. すなわち $E := \mathbb{N}^{\mathbb{R}_{>}}$ とします. そして, $f, g\in E$ に対して, $f(n)=O(g(n))$ のときに $f\leq g$ と定義します.
 即ち, ある $m \in \mathbb{N}$ 及び 定数 $c>0$ が存在して, 任意の $n \geq m$ に対して $f(n) \leq c \cdot g(n)$ が成り立つ, というときに $f \leq g$ と書くのです.

 オーダーによって定められたこの関係$\leq$ は,
  1. $f(n) = O(f(n))$ より, $f \leq f$ (反射律)
  2. $f(n) = O(g(n)),\,g(n)=O(h(n))$ ならば, それぞれの定数を$m_1,c_1,m_2,c_2$ としたときに $m=max(m_1,m_2)$, $c=c_1 \cdot c_2$ ととれば, 任意の $n \geq m$ に対し $f(n) \leq c_1 \cdot g(n) \leq c_1 c_2 \cdot h(n)$ となるので, $f \leq h$ (推移律)
 となるので, 擬順序となっています. 更に, $f(n)=n^2,\,g(n)=n^2+1$ と定義すると, $f \neq g$ でありしかも $f \leq g$ かつ $g \leq f$ となっているため, 条件3を満たしません. 即ちこれは 擬順序だが半順序でない例 になっているわけです.

例(iii). 確率変数


 確率空間 $(\Omega,\,\mathcal{F},\,P)$ 上の二つの確率変数 $X,Y:\Omega \to \mathbb{R}$ が

任意の $x \in \mathbb{R}$ に対して $\mathrm{Pr}(X \geq x) \leq \mathrm{Pr}(Y \geq x)$

を満たすとき, $X \leq Y$ と定義します. (ちなみにこのとき $Y$ は $X$ を支配する (dominate) と言います)

 気持ちとしては 「$X\geq x$ となる確率よりも $Y \geq x$ となる確率の方が高い」ということなので, 「$X$ よりも $Y$ の方が 大きい値をとりやすい」ということになります. 例えば「表の出る確率が0.5 のコインを $n$ 回投げて, 表が出た回数」を $X$, 「表の出る確率が 0.7 のコインを $n$ 回投げて, 表が出た回数」を $Y$ とすると, 明らかに$Y$のコインの方が表が出やすいので, 直感的には $X \leq Y$ な気がしてきます. (実際にこれは確率論で使われる「カップリング」と呼ばれるテクニックを用いて鮮やかに示すことが出来ます)

  1. $\mathrm{Pr}(X \geq x) = \mathrm{Pr}(X \geq x)$ なので, $X \leq X$.
  2. 任意の$x,y\in \mathbb{R}$ に対して, $\mathrm{Pr}(X \geq x) \leq \mathrm{Pr}(Y \geq x)$, $\mathrm{Pr}(X \geq y) \geq \mathrm{Pr}(Y \geq y)$ ならば, 任意の$z \in \mathbb{R}$に対して $\mathrm{Pr}(X \geq z) \leq \mathrm{Pr}(Y \geq z) \leq \mathrm{Pr}(Z \geq z)$ となるので, 推移律も成り立ちます.
 一方で, 例えば「確率0.5で表が出るコインを $2n$ 回投げたとき, 前半の$n$回の中で表が出た回数を $X$, 後半の$n$回の中で表が出た回数を $Y$」としてみると, $X$と$Y$は同じ分布に従うので$X \leq Y$かつ$Y \leq X$なのですが, 確率変数としては異なるので, $X \neq Y$です(*).

(*): 「確率変数として異なる」という部分を細かく議論します. 確率変数とは $\Omega$ から 実数 への$\mathcal{F}$-可測写像なので, $X=Y$ ということは 任意の $\omega \in \Omega$ に対して$X(\omega)=Y(\omega)$ ということを意味しています. 今回のコイントスの例では標本集合$\Omega$を $\Omega = \{0,1\}^{2n}$ として, σ-集合体を $\mathcal{F}=2^{\Omega}$ として, 確率測度$P$を$\Omega$上の一様分布とします. (つまり任意の $\omega \in \Omega$ に対し $P(\omega)=1/2^{2n}$). そして $\omega = \{\omega_1,\omega_2,\ldots,\omega_{2n}\}\in \{0,1\}^{2n}$ に対して, $X(\omega)=\omega_1+\omega_2+\cdots+\omega_n$, $Y(\omega)=\omega_{n+1}+\omega_{n+2}+\cdots+\omega_{2n}$ と定義します. すると $X, Y$ はコイントスの例と同じ分布に従うような確率変数となっていて, 明らかに $X\neq Y$ となっています.


例(iv). 有向グラフ


 有向グラフ $G$ 上の 2頂点 $a,b$ で, $b$ から $a$ への有向パスが存在するとき, $a \leq b$ と定義します. 
  1. $a$ から $a$ へは長さ0のパスがあると見なすので, $a \leq a$ です.
  2. $a \leq b,\,b \leq c$ ならば, $c$ から $b$ をつたって $a$ にいたるパスがあるので, $a \leq c$ となります.
 従ってこの順序関係は 擬順序 となります. 更に, $G$ が DAG の場合は条件3も満たすので, 半順序となります. 更に$G$のトポロジカル順序が一意の場合は, 条件4も満たすので全順序となります.

2016年3月4日金曜日

摩訶不思議系魔法ランキング

それでも色々数学について勉強していると何かと「ホンマかそれ」と思うような, まさに「魔法」のような定理やアルゴリズムに出会い数学って面白く奥深いなぁと感じることがあると思います. そこで僕が今まで出会ってきた「魔法」の中で非常に印象の深かったものの中で深夜にパッと思いついた分だけ列挙していきます. タイトルにランキングとありますがランキングではありません. 列挙です. 多分グラフ理論についてが多いです.

理論部門

・貪欲法が上手くいく ⇔ マトロイド

 「行列のようなもの」という意味をもつマトロイドは, 有限集合Eとある三つの公理を満たすEの部分集合族Fによって(E, F)の形として定義されます. 三つの公理とは

(M1): 空集合 ∈ F
(M2): AがBの部分集合, かつB∈F ならば, A∈F
(M3): Fの要素A, Bが|A| < |B|ならば, e∈ B-A が存在し, A∪{e} ∈ F とできる.

ここでFの各要素はEの部分集合になっていて, Fの各要素のことを独立集合と言ったりします. また, 独立集合のうち集合の包含関係に関して極大であるようなものをと呼びます.
 たとえば行列Aを持ってきたときにAを列ベクトルが集まったものとみなし, この列ベクトルの集合をEとし, 「線形独立である列ベクトルの集合」を独立集合とみなしたとき(E, F)はマトロイドになっています. 他にも, グラフGを持ってきたときにその辺集合をEとし, 「閉路をなさないようなEの部分集合」を独立集合とみなしたときのM=(E, F)もマトロイドとなっています. このときGの全域森(Gが連結なら全域木)はマトロイドMの基となっています.
 集合Eとその部分集合Fが(M1)と(M2)を満たしており, さらにEの重み関数 w: E→R があるとします. ここで(E, F)にはFの極大な要素が存在するのでこれを基と定義します. またEの任意の部分集合Xに対して, w(X) = Σw(e) (e∈X) と定義します. このとき次の最小化問題を考えます.

min: w(X)
s.t. Xは(E,F)の基である.

この問題に対して,
「Eの要素をw(e)の値でソートし順番に付け加えて基になるようにする」という貪欲法が最適解を得るための必要十分条件が
(E, F)がマトロイドである.
というのです.
たとえばこのグラフの最小全域木問題に対するクラスカル法がこれに該当します. 他にもマッチングとかもマトロイドと絡んできて面白いのですが, 個人的には(E, F)に対する組合せ最適化問題で貪欲法がうまくいくための必要十分条件がマトロイドである, という事実が結構驚きでした. 実はこの事実はWhitneyにより「マトロイド」という単語が初めて出てくるよりもちょっと前に証明されていたようです.

・バーゼル問題

その昔, オイラーによって解かれた非常に有名な数学の問題です. 調和級数は発散しますが, 平方数の逆数を足していくとπが出てくるというのは当時高校生だった僕にとってはかなり衝撃的だった記憶があります. 一回証明をパラっと読んだくらいで全然詳しくないですが, 僕が数学にのめりこんだきっかけの一つです.

・ランダム正則グラフにおける三角形の個数

ランダムグラフ理論というのはある性質を満たすグラフが存在するときに使われたのが最初でした. 具体的には「Erdős–Rényi の定理」が最も有名です.

<Erdős–Rényiの定理>
 任意の整数k>0 に対して, girth(最小の閉路の長さ)と染色数がkより大きいグラフが存在する.

 この定理で使われたランダムグラフG(n,p)というのは, まず頂点をn個持ってきて「各頂点ペアに対して独立に確率pで辺をひくかどうか決める」ことによって生成されます. これによって生成されたランダムグラフはnとpをパラメータにもちますが, ランダムグラフの界隈ではnを無限に飛ばしたときの挙動について調べることが多いようです.
 しかし, たとえばランダムな正則グラフ(各頂点の次数が等しいグラフ)を作りたいみたいなことがあるかもしれません. また, ほとんど全ての正則グラフが満たすようななにか面白い性質はないだろうか, という理論的興味があります.
 Reg(n, d)で頂点数n, 次数dの正則グラフの全体を表すこととします. このときReg(n, d)の要素を一様ランダムに一つグラフをとってきたときに, そのグラフに含まれる三角形の個数は平均(d-1)^3/6のポアソン分布に従う
 ということが分かっています. なんでポアソン分布が出てくるのかというと, 二項分布を近似しているからです. 一般にk角形の個数は平均(d-1)^k/2k のポアソン分布に従うようです.
 「そもそもどうやって正則グラフを一様サンプリングするの?」という疑問が出てきますが実はこのサンプリング自体も研究テーマになっていて, FOCSというすごい国際会議に出てたランダム正則グラフの高速なサンプリングアルゴリズムについての論文が載っていました. 最も有名なサンプリングの方法としては「paring model」「switch」という手法があります.

・グラフ上のランダムウォークの定常分布への収束速度

グラフ上でのランダムウォークをマルコフ過程と見なし, 定常分布へどれくらいのスピードで収束していくかという議論があるのですがこれはグラフのラプラシアンの第二固有値と深く関わってくる、というものです.
 そもそもグラフのラプラシアンの固有値の集合のことをそのグラフのスペクトルと呼ぶらしいのですが, このスペクトルについての理論として「グラフスペクトル理論」というのが存在します. たとえばグラフ連結成分の個数はスペクトルの中の0の個数と等しい,「正規化されたラプラシアン」のスペクトルを使ってあるグラフが二部グラフであるための必要十分条件を与えることができる, などといったことがあります.

アルゴリズム部門

・xor swap

え、なんでこれだけでswapできるの!!?え!?!??!

・ワーシャルフロイド法


 え、なんでこんな簡単なコードで全点対最短経路を求められるの!!?え!?!??!
 なんとなくですがワーシャルフロイド法の正当性の証明は考えるとためになるような気がします.

・Tseitin transformation

任意の論理式を, その論理式のSAT性を保ったままCNFに変換するというものです. しかし変数は若干増えるため, 元の論理式と得られたCNFは同値ではありません. 詳しくは以前の記事で説明しています. 初めて知ったときは素直に「頭良いなぁ」と思いました.

2016年2月9日火曜日

位相空間と可測空間の対比

前までは位相空間や可測空間と聞くとどうしても「オェ...」ってなってしまっていたのですが、最近になってザリスキー位相やマルチンゲールについて学んでいくうちにどうしてもこれらの単語について知っておかねばならなくなったので少し勉強しました.

「位相空間」の定義と「可測空間」の定義は意外と似ているので対比して紹介しようと思います. 参考文献として Real and Complex Analysis (著: Walter Rudin) を挙げます.

以下, 位相空間に関する諸定義をT, 可測空間に関する定義をMと表すこととします.

T: 非空な集合Xに対し, O ⊆ 2^X が以下の条件を満たすとき, これら二つの組 (X, O) を「位相空間」と呼ぶ.
(1): ∅, X ∈ O.
(2): A1, ..., An ∈ O ならば (Aiの有限個の積) ∈ O.
(3): 各λ∈Λに対し, A_λ ∈ O ならば, U A_λ ∈ O

M: 非空な集合Xに対し, F ⊆ 2^X が以下の条件を満たすとき, これら二つの組 (X, F) を「可測空間」と呼ぶ.
(1): X ∈ F.
(2): A ∈ O ならば (Aの補集合) ∈ F.
(3): A1, ..., An ∈ O ならば (Aiの有限個の和) ∈ F.





位相空間(X,O)可測空間(X,F)

位相Oσ-代数F
開集合Oの要素可測集合Fの要素

連続写像開集合の逆像が開集合可測関数開集合の逆像が可測集合
ここで, 可測関数とは可測空間から位相空間への写像のうち, 表中の性質を満たすもののことを言います.
このように見てくるとなんかスッキリした形になりますね.

STOC26参加記

STOC2026に参加して4日目にこれを書いている。開催場所はソルトレイキシティで、日本との時差は15時間ある。基本的には夜中の2時に目が覚めて、15時くらいからめちゃくちゃ眠くなる生活が続いている。今回はありがたいことに2本通って2回発表する機会を得たのだが、最後の二日間の夕方...